中央図書館が国の登録有形文化財に登録されます
更新日:2025年11月27日
祝!日野市立中央図書館が国の登録有形文化財に登録へ
「日野市立中央図書館」は、令和7年(2025年)11月21日に開催された国の文化審議会文化財分科会にて、登録有形文化財(建造物)に新たに登録するよう文部科学大臣に答申されました。今後、官報の告示をもって正式に登録となる予定です。市内の建造物で国登録有形文化財に登録されるのは、「旧農林省蚕糸試験場日野桑園第一蚕室」に続き2例目となります。

中央図書館(外観)
中央図書館は、豊田駅南口から徒歩7分程度の場所に位置し、積み上げた赤いレンガが特徴的な建物です。利用者がゆったりと本を選べるようスペースがとられ、庭側に面した閲覧席は一面のガラス窓で開放感や落ち着きのある空間となっています。当時敷居が高い存在だった図書館を、市民に近い場所から活動を始めることで身近な存在へと変えた日野市立図書館は、日本の公共図書館の転換点となり、理念を体現するよう設計された中央図書館は、全国の図書館建築に影響を与えました。
答申では、日本を代表する公共図書館建築として、登録基準「2 造形の規範となっているもの」に該当するとされ、新規登録163件のうち「④現代図書館建築の殿堂」として、今回の答申における主な建築物9件にも取り上げられました。
- 文化庁ホームページ
「文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)」(2025年11月21日報道発表)(外部サイトにリンクします)
| 所在地 | 東京都日野市豊田2-49-2 |
|---|---|
| 建設年代等 | 昭和48年(1973年)/令和元年(2019年)改修 |
| 意匠設計 | 鬼頭梓建築設計事務所(家具共) |
| 構造規模 | RC造(鉄筋コンクリート造)地上2階、地下1階 |
| 登録基準 | 二 造形の規範となっているもの |
| 特徴・評価 | 豊田駅南方に位置する市立中央図書館。鉄筋コンクリート造地下一階建、外壁焼過煉瓦積。選書の快適さを重視し、開架室は吹き抜けの庭側を全面ガラス窓とするなど、初代館長前川恒雄の構想を建築家鬼頭梓が具現化。現代公共図書館の起点となった建築。 |
日野市立中央図書館の建設へのあゆみ
日野市立図書館は、昭和40年(1965年)に1台の移動図書館によって活動が始まりました。
当時、公共図書館は戦後の新しい図書館法で「無料公開の原則」の理念が掲げられていましたが、多くの図書館では、現在のように利用者が棚から自由に本を選んだり、家に持ち帰って読んだりすることは一般的ではありませんでした。資料は図書館職員に問い合わせ、バックヤードから取り出されてきた資料を館内で閲覧するという方法が主で、図書館は市民にとって敷居の高い存在でした。利用の大部分は受験生の座席利用で、受験シーズンには図書館に列をなす受験生の姿がニュースで取り上げられることもありました。
こうしたなか、戦後の経済成長の過程で各地に図書館が建設されましたが、サービスよりも建物の記念性に重きをおいた建築が多かったようです。中央図書館が建設されたころの雑誌に、次のような記述があります。
三十年代の後半から社会情勢は急激に変化し、経済成長の波にのって新しく図書館を建築する機運が、都道府県や市町村におこってきた。その動機は種々あろうが、活動やサービスの内容そのものに対する裏付けは依然として甚だ貧しいまま、建物だけは年とともにデラックス化し、図書館資料費や運営費に比して建築及び設備費には惜しみない投資が行なわれ、建築家も競ってデザインに力を注いで来た。
出典:「建築知識」1973年10月号(vol. 15, no. 10)
「増大特集 図書館 ―公共図書館の計画・設計の要点と実例―」の「巻頭言 これからの公共図書館」(東京大学教授 吉武泰水, p. 76-77)から抜粋
こうした状況のなか、「図書館の基本的・本質的機能は資料の提供である」として、日本の公共図書館を市民のための図書館へと変える契機となったのが、前川恒雄初代館長をはじめとする日野市立図書館の活動です。移動図書館で市内全域をめぐり、市民が読みたい本・必要とする本の貸出に徹し、市民のくらしの中に図書館を浸透させていきました。

多摩平218号館前(1969年10月31日 学研撮影)
そして動かない図書館がほしいという市民の声が上がるようになり、地域の中の図書館として分館の設置を進めていく中で、昭和48年(1973年)に中央図書館を開館しました。
後に日本の図書館建築のパイオニアと評価される鬼頭氏は、前川館長と連日議論を重ね、移動図書館にも実際に乗って、日野市立図書館の目指す図書館サービスを肌で感じてくださったそうです。
鬼頭氏が前川館長の示した5つの基本方針を受け止め、図書館に求められる機能を具現化してくださった日野市立中央図書館は、日本の公共図書館の歴史を決定的に方向付ける影響を及ぼしたと言われています。
初代館長・前川恒雄が設計のうえで示した5つの方針
- 新しい図書館サービスを形で表す
- 親しみやすく、入りやすい
- 利用しやすく、働きやすい
- 図書館の発展、利用の変化に対応できる
- 歳月を経るほど美しくなる
なお、初代館長・前川恒雄は、日野市立図書館の開設から中央図書館開館までの記録について、著書『移動図書館ひまわり号』(筑摩書房/夏葉社)に記しています。日本になかった「市民の図書館」を目指して、困難な状況の中で全力をふりしぼって挑んだ図書館員と市民の物語となっています。
内容について「図書館長の本箱」にて紹介しているほか、本は図書館で借りられますので、ぜひご利用ください。また、講談師・田辺凌鶴氏による講談「日野の移動図書館ひまわり号」が披露された講演会「日野市の図書館 歩みと建築~登録有形文化財への登録に向けて~」の動画も公開されています。併せてご利用ください。
ほか詳しい図書館のあゆみは、日野市立図書館ホームページに掲載の「日野市立図書館のあゆみ」や50周年記念誌「本の力図書館の力を信じて」をご覧ください。
中央図書館の特徴
中央図書館の1階は、仕切りのないL字型の空間で構成されており、交点部分には玄関ホールや図書館職員が常駐するカウンターが設けられています。

中央図書館1階の図面(イメージ)
L字型空間の南東側は一般開架、南西側は児童開架と機能が振り分けられています。これについて前川恒雄は「親子が同じフロアでお互いの気配を感じながら一緒にいる」ことが大事だと述べており、当時の日野市立図書館が目指していた図書館利用の在り方を見ることができます。
一般開架には、1階から2階まで吹き抜けがあり、吹き抜けは2階のレファレンス室や事務室と接しています。L字の内側は樹木が茂る中庭で、中庭に接する壁は一面のガラス窓になっていることから、1階のフロアはもちろん、2階の事務室でも外光や眺めを得ることができます。
中央図書館 1階
中央図書館 中庭
書架は利用者が本をゆったりと選べるよう幅がとられ、書架の下部は本を選びやすいよう、斜め上向きの角度がつけられています。また児童開架では、本棚は子どもでも選びやすいように低めに設計され、机や椅子も低めに製作されています。
一般書架の合間から中庭を望む
児童開架にある机と椅子
中央図書館の来館・見学のご案内
日野市立図書館は、市民に限らずどなたでもご来館いただけます。
館内にある資料の閲覧や個人による自由見学について、事前申込みや利用者カードの発行は不要です。
近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
なお、団体による見学・視察の場合は、事前に中央図書館までご相談ください。
見学・撮影等をご希望の方へ
- 開館時間内において、個人による自由見学が可能です。
- 館内にある資料の閲覧や個人の自由見学について、事前申込みはいりません。
- 資料の貸出や予約には、利用者カードが必要です。利用者登録については、利用案内のページをご覧ください。
- 団体による見学・視察は、日程や人数など、事前に中央図書館までご相談ください。
- 見学中は利用者の妨げにならないようご注意ください。
- 館内の撮影は原則禁止です。撮影希望の場合は、必ず図書館窓口にてお申し込みください。窓口にて「撮影許可申請書」にご記入いただきます。
- ロケーション撮影に関する相談は「日野映像支援隊」にご連絡ください。
開館時間・アクセス
開館時間
- 火曜日から金曜日までは、午前10時から午後7時
- 土曜日・日曜日・祝日は、午前10時から午後5時
備考:祝日を除く毎週月曜日と年末年始は休館
アクセス
- JR中央線豊田駅南口から徒歩約7分
- 駐車場の台数には限りがありますので、できる限り公共交通機関をご利用ください
本件に関するお問い合わせ
電話…042-586-0584(代表・直通)
メール…library★city.hino.lg.jp(★を@に置き換えて送信してください)
