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図書館員の本箱 再開第15回

更新日:2021年1月5日

『それでも僕は夢を見る』

水野敬也/作 鉄拳/画

文響社

2014.3

『それでも僕は夢を見る』の書影

この本は、『人生はニャンとかなる!』や『夢をかなえるゾウ』などの著者の水野敬也さんの文章を鉄拳さんが絵で表現した作品です。

2014年に出版された本で、その時も絵の表情に魅せられ読んでみたのですが、返却された本を見かけ、懐かしくなって手に取ってみました。

若かった"僕"は人生に夢を持って生きていました。この本で"夢"は擬人化され、いつも明るい表情で"僕"に寄り添い、励ますのです。でも志望校に落ち、就職も思うところには入れず、好きな人にも振り向いてもらえませんでした。そしてついに"僕"は"夢"と決別してしまいます。

孤独に年を取った"僕"が死を迎えようとするとき、同じように年を取り、力なく消え入りそうな姿で"夢"が現れます。"僕"に伝えたいことがあったのです。

自分も夢や希望というものを持ったこともありましたが、殆どにおいて叶いませんでした。自分が無力でとても惨めに思える時もたくさんあります。でも年を取って思うことは、それでもこうやって生きていられるのは、必ずどこからか、誰からかの救いの手があったからだということです。

最後に"僕"から手紙が送られますが、その文章がとても胸に沁みます。(K)


*「図書館員の本箱」-2020年に読んだマイ・ベスト-の連載は、本日最終回です。

2021年も皆様のくらしの中に本と図書館を。