コンテンツにジャンプ

トップページ > 図書館員の本箱 > 大人向け > 図書館員の本箱 再開第9回

図書館員の本箱 再開第9回

更新日:2020年12月30日

『パソコンはいらない』

小幡浩二/著

講談社

1998.9

『Lotus1-2-3入門』

太田一郎/[ほか]共著

森北出版

1993.5

『WINDOWS95オフィシャルマニュアル』

Craig Stinson/著

アスキー

1996.3

図書館員というと、本好きたくさん本を読んでいるというイメージがあるかもしれません。私も子どもの頃は、学校の図書室や地元の図書館でごっそり本を借りてきて宿題そっちのけで読む、なんて日常を送っていました。しかしこの頃はじっくりと読書に割く時間も多くなく、お恥ずかしながら「この本が素晴らしく面白かった!」というような、本の内容を推せるほど読んでおりません。代わりに、年末そして図書館員ならではのちょっと変わった「マイ・ベスト」をお届けしたいと思います。

皆さんは、書庫の存在をご存じでしょうか?図書館では日々新しい本を入れているため、棚から本を適宜抜いていかないと入りきらなくなってしまいます。そのため古くてあまり使われなくなった本は、開架(本が並んでいる表のフロア)から書庫へ移しています。この書庫でも開架の棚と同じように手狭になっていくので、もう使われる見込みがなく、都立図書館などから借用できそうな本については、リサイクル資料として市民の方に頒布しています。

こうした、鮮度の落ちた本を棚から選び取ることを「ウィーディング」といいます。多摩平図書館の書庫にはいくつかの分野の本が入っているのですが、その中でもウィーディングの頻度が高いのが5門の本です。

5門の本は、請求記号(背表紙の下部に貼ってあるラベルの記号)が5から始まる本で、工業や電気、パソコンといった技術・工学ジャンルの本です。5門の本の中でも、特に入れ替わりが激しいのが情報工学(請求記号が548台)の本です。

ドッグイヤーどころかマウスイヤーとさえ呼ばれる進歩の速さのお蔭で、情報工学関連の本は毎日のように新しい本が出ています。インターネットやパソコンの使い方に関する本は利用が多い一方で、10年も経てばほとんど使われなくなっていきます。多摩平図書館の書庫では、タイトルが「インターネット」から始まる本だけで2-3段になる始末......。他にも、サポートが切れて久しいソフトウェアの実用本もあふれており、棚からはみ出るような状況でした。

この書庫を"使える"書庫とするため、6月までの臨時休館期間中などにはひたすら書庫の整理をしていました。似たような本があれば、索引が付いていて調べ物に使えるものや、情報が多く新しいものを残すなど、それぞれにざっと目を通しながら、図書館に残す本を選んでいきました。そんな中で目に留まった本がありましたので、3冊ほどご紹介します。

『パソコンはいらない』小幡浩二/著 講談社 1998.9

21世紀になって20余年。パソコンはもはや社会に欠かせない存在となっているからこそ、このタイトルが目に留まりました。中身を確認してみると、この本が出版されたのはWindows98が発売されて2か月くらい経った頃でした。当時パソコンというと企業で文書作成や計算をするのに使うのが主で、今のスマートフォンのような身近さはありませんでした。パソコンが家庭へと馴染んでいく直前の頃に、パソコンが必要な時はどういう時か、落とし穴はどこか、といったことがこの本には書かれています。参考資料というよりは、当時の社会を知る資料となったこの本。当時社会人だったあなたは懐かしみながら、デジタルネイティブのあなたはちょっと昔の話として眺めてみるのも良いかもしれません。

『Lotus1-2-3入門』太田一郎/[ほか]共著 森北出版 1993.5
『WINDOWS95オフィシャルマニュアル』Craig Stinson/著 アスキー 1996.3

もはや化石と呼びたいこの資料。過去5年間に貸し出された形跡はなく、天(本を立てて置いたときの上の切り口)をなぞると指が黒くなりました。

「Lotus1-2-3(ロータスワンツースリー)」は、表計算やグラフ、データベース機能を持ったソフト......のようです。現在ではサポートも終了しており、私も見たことはありません。このソフトウェアに関する本は他にもあるのですが、ここではあえて『Lotus1-2-3入門』を挙げたいと思います。最近の本の付録はCD形式が多いですが、この本にはFD(フロッピーディスク)が付いています。デジタルネイティブ世代にとってはあまり馴染みのない記憶媒体ではないでしょうか。厚紙に埋め込まれるようにして収まっているFDは、何かの文化財のような雰囲気さえまとっています。読み込めるかはわかりませんが、この本ではFDの実物を見ることができます。

『WINDOWS95オフィシャルマニュアル』については、こんな本がまだ図書館にあったのか、という印象でした。Windows3.1など前のバージョンに関する本も書庫には並んでおり、当時これらの本を利用した人や、今後利用されるならどのような場面かなどと、思いを馳せながら中身を確認していきました。最近のパソコンに表示されるアイコンは滑らかで綺麗ですが、この本の説明に出てくる粗めのドット絵も素朴でかわいらしく、また違った良さを感じました。月日を感じる一冊です。

以上、ウィーディング中に気になった書庫の本マイ・ベストでした。他にも気になった本はあるのですが、残念ながら3冊までというルールですので、この3冊の紹介で終えたいと思います。気になった方はご予約ください。ただ......皆様も大掃除や片付けをした、あるいはこれから急ピッチで進める頃合いでしょうか。なにぶん手狭な書庫ですので、場合によってはご予約の前にリサイクル資料になっていることもあるかと思います。ご容赦くださいませ。(Y)