図書館員の本箱 再開第2回
更新日:2020年12月23日
『えげつない!寄生生物』
新潮社
2020.3

なぜ、そうなったのかわかりませんが、ずいぶん昔に、寄生虫に関する藤田紘一郎氏の著作を何冊か読み、それ以来、寄生虫に興味を持つようになりました。今回、この本を読むきっかけになったのは、新型コロナウイルスが流行し、ウイルス関連の書籍を紹介しているサイトを見て、表紙に引き付けられたからです。
『えげつない!寄生生物』は、16種類の寄生生物を取り上げ、どのように他の生物に宿り、支配していくのか、また、その目的は何なのかをわかりやすく解説しています。一つ紹介しますと、カマキリに寄生するハリガネムシですが、川の中で卵が孵化すると幼生は、カゲロウなどの水生昆虫に食べられるまで、じっとしています。そして、ハリガネムシを食べた水生昆虫は陸に上がり、カマキリに食べられ、その中に宿ることになります。その後成熟したハリガネムシは、子孫を残すため交尾をしなくてはなりませんが、川の中でしかできません。そこで、泳げないカマキリを川の中に飛び込ませるように操り、水中でカマキリから脱出し、異性と出会うため放浪の旅に出ます。いいように利用されたカマキリは哀れですが針金のようなハリガネムシのこのような策略には正直驚かされました。
以上、一部を紹介しましたが、ほかにも「蜂に狙われるテントウムシ」や「寄生カビに脳を乗っ取られたアリ」の話などこの本にでてくるすべての寄生生物の行動には、驚嘆を禁じえませんでした。(H)
※書影...成田聡子『えげつない! 寄生生物』(新潮社刊)