図書館長の本箱<図書館員の本箱 連載最終回>
更新日:2020年6月2日
『図書館戦争』
アスキー・メディアワークス
2006.3(角川文庫版 2011.4)
この小説が見計らいの棚に並んだ当時、図書館内はざわめいたものです。すごいタイトルの本が出た。「図書館の自由に関する宣言」がテーマらしい。図書館員がこんなにかっこよく描かれる時代が来るなんて。そして...日野市立図書館が襲撃されている...。
架空の設定として、全ての本が「メディア良化法」によって検閲され、「図書館の自由法」を掲げる図書館のみが対抗し、互いに武装して戦う社会が描かれています。一方、登場人物それぞれが、自分なりの理想と、ままならない自分を抱えて日々奮闘している姿は現実の私たちと一緒です。
続編として『図書館内乱』『図書館危機』『図書館革命』、さらに外伝Ⅰ・Ⅱも発行され、もはや図書館の置かれた状況や課題を考える最高のテキストになっているのではないか、とさえ思われます。著者のリサーチ力と想像力に感服です。
アニメ・映画・コミックと様々な媒体に展開し、現在も多くの読者を持ち続ける作品です。舞台となった場所を訪れるファンの方もおられ、日野の図書館にもそっと立ち寄られている気配を感じています。(小説では「日野図書館」と記されているため、中央図書館ではなく分館の日野図書館を訪れて「意外と小さい」という感想をつぶやかれる方もいらっしゃるようです。)
この小説は私たちに問いかけています。「正義」とは何か?「正義」を決めるのは誰か?「正義」のためならそれは許されるのか?現実の「図書館の自由に関する宣言」の一部を変えて記載しているところが大きなポイントです。どこを変えているのか、ぜひ各図書館内に掲示している「図書館の自由に関する宣言」をご覧いただき、見つけてみてください。日野市立図書館は、4月9日より臨時休館としておりましたが、本日6月2日に全館開館いたします。
*4月22日より毎日連載してきました「図書館員の本箱」は本日最終回です。本の力を信じる私どもが、普段よりも思い入れたっぷりに語らせていただきました。開館後も、まだ様々な対策を必要とする状況ではありますが、必要な時や本については遠慮なく図書館員にお声がけいただければ幸いです。