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ふくろうくん

更新日:2020年5月20日

『ふくろうくん』

アーノルド・ローベル/作 三木 卓/訳

文化出版局

1976.11

茶色とからし色の渋い表紙。ちょっとコワモテ(!?)のふくろうくん。表紙をひらくと、そこにはユーモラスな短いお話が5つ収められています。

冬をおうちに招き入れたり、布団にひそむ「こんもりくん」と戦ったり、月に追いかけられたり。(どういうこと?と思った方は、ぜひご自分で確かめてみてください)これらの愉快なお話はすべてふくろうくん1人の生活の中で起こることです。この本には、生き物はふくろうくん以外誰も出てきません。ふくろうくんの生活は喜怒哀楽にあふれていますが、それもすべてふくろうくんが自分で生み出したもの。それがとっても豊かだなあと感じ、いつも元気をもらう1冊です。

中でも私が大好きなお話は「なみだのおちゃ」です。ふくろうくんは自分の涙を溜めてお茶をわかそうと、悲しいことを次々と思い浮かべます。ストーブのうしろに落ちてみつけられないスプーン、ぜんまいを巻いてくれる人がいなくて止まったままの時計、お皿にのこったマッシュポテト...。アーノルド・ローベルの静かで寂しげな絵も相まって、切ない!...と、読んでいてちょっぴりセンチメンタルな気分になるも、ぴたっと泣き止む淡々とした行動と、しあわせそうにお茶を啜るふくろうくんの一言に、なんだかいつも小さく救われるのでした。(S)