ツバキ文具店
更新日:2020年5月17日
『ツバキ文具店』
幻冬舎
2016.04
手紙を上手に書くことができたら素敵だなぁ
といつも思う。けれども、年賀状でさえ、たった一言書くのに何日もかかってしまい、毎年毎年、年末(たまには年始にも・・・)あわててポストまで走るというありさまの私にできるはずもなく・・・。
それなのに、お店にいくとつい、素敵な便箋やら封筒やらを買ってしまってハッとするということを繰り返している・・・。
この本の主人公であるポッポちゃんこと雨宮鳩子さんは、先代の祖母のあとをついで鎌倉にある「ツバキ文具店」を営んでいる。そして雨宮家は江戸時代から続くとされる代書屋でもある。代書屋とはポッポちゃんいわく「早い話、文字に関するヨロズ屋」であり頼まれれば書く仕事であれば何でもこなす。
そんなポッポちゃんのもとにはいろいろな代書仕事が舞い込む。絶縁状や天国からの手紙、初恋の人への手紙などなど・・・。
依頼人たちの個性や依頼も様々なのだが、驚くのはその個性と依頼にあわせてポッポちゃんが、字の形や紙の種類、ペン、そして封筒にはる切手までもこだわっていることだ。
こんなに紙やペンには種類があるんだ!手紙を書くということはなんて深いことなんだ!と、私は恥ずかしながらこの本を読んで改めて思い知った。
そして字にはそれぞれ個性があるという・・・私は自分の字を見て思わずドキリとしたが、ポッポちゃんが「字には、それを書く人の人柄がそのまま出ると思い込んでいた。けれど、それは間違いだった」というシーンもあり、なんだか少しホッとしてしまったり。
そのほか、この本には手紙の書き方のきまりなど興味深いことがいろいろと書いてある。また、ポッポちゃんとポッポちゃんの周りの個性的な人々とのやりとりも大変面白く味わい深い。
読んだ後、自分らしい字で心をこめて久々にだれかにお手紙を書いてみたくなった。(A)