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人生を変えてくれたペンギン 海辺で君をみつけた日

更新日:2020年5月15日

『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君をみつけた日』

トム・ミッチェル/著 矢沢聖子/訳

ハーパーコリンズ・ジャパン

2017.1

ペンギンの可愛らしい表紙の絵に惹かれ、手に取った1冊です。作中に描かれているペンギンの挿絵も今にも動き出しそうで、活き活きとしています。
ノンフィクションの作品であり、イングランドの農村で育った著者は、アルゼンチンの全寮制男子校の教師に採用されます。冒険好きの著者は、行ったことのない南米があこがれの地だったそうです。時代は1970年代。アルゼンチンの政情は不安定で、周囲の人からは反対されましたが、勇気ある行動でした。著者が23歳の時、休暇で訪れたウルグアイの海岸で、重油にまみれて死んでいる多数のペンギンを目撃し、その中でたった1羽、生き残っているペンギンを発見します。すぐに、そのペンギンを助け出し、浴槽で身体に付いている重油を洗い流します。弱っていたが野生のため、激しく抵抗するペンギンをなんとかつかまえる場面が緊迫感を持って描かれています。野生のペンギンなので、きれいに身体を洗った後で、元いた海へもどそうとするのですが、そのペンギンは何度も後をついてきます。著者はやむなく、アルゼンチンへとペンギンを連れて帰り、なんと学校の屋上で飼うことになるのです。そのペンギンは、「フアン・サルバドール」と名付けられ、学校内の人気者になります。
野生の大人のペンギンが、こんなにも人になついて、賢いのにはとても驚かされました。著者がペンギンの表情や仕草から、そう言っているであろうと想像して、あたかもペンギンがしゃべっているように書かれているので、より話に引き込まれます。
この本は、当時教師をしていた時代の著者が、家族や友人にあてた手紙を元に、本にしたものです。ペンギン「フアン・サルバドール」とともに過ごした日々の回想と、著者の冒険の話、アルゼンチンの社会情勢や人々の暮らし、寮生活を送る生徒たちの話、ペンギンの生態の話と、いろいろな話が盛り込まれています。図書館では、自然科学の鳥類の棚(請求記号488.6)にあります。動物が好きな方も、そうでもない方にもおすすめです。(K)