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僕とおじいちゃんと魔法の塔 1(角川文庫)

更新日:2020年5月13日

『僕とおじいちゃんと魔法の塔 1(角川文庫)』

香月日輪/著

角川書店

2010.1

主人公は小学6年生の龍神(たつみ)です。特に特徴もなく通知表にいつも「おとなしいいい子です」と書かれています。家族をしっかり引っ張る厳格なお父さんと美人で優しいお母さん、文武両道の小学5年生の弟とちょっと勝気な小学3年生の妹の5人家族です。でも理想的な家族の中で最近なんだかもやもやしています。ある日龍神はサイクリングの途中で岬に立つ塔を見つけます。ハリーポッターに出てくるような洋館です。その塔に心惹かれ中に入るとおじいちゃんの幽霊と出会います。このおじいちゃんの幽霊と話すことで龍神の世界が広がっていきます。

まずは冒頭でいきなり「いい子」とは何か「悪い子」とは何かについて突きつけられます。ここですでに著者の思惑にはまっています。善悪や孤独についてどう思うのか、自分で考えさせられます。子どもの成長を描くとともに、親の成長も描かれています。私自身子どもに自分の意見を押し付けていないか、この父親と似たようなこと言っていないか反省させられます。

既刊6巻の1巻目ですがこの巻だけでも話は完結されています。元は小学生向けに書かれたものを文庫化したもので、児童書として角川つばさ文庫版2012.11もあります。親子で一緒に読める本です。でもすぐに感想は聞かないでください。自分からこう思うと言ったときにじっくりと耳を傾けてほしいです。(A)