わすれられないおくりもの
更新日:2020年5月10日
『わすれられないおくりもの』
評論社
1986.10

ラジオ番組「きらクラ!」が3月で終了してしまいました。8年間続いた長寿番組がなぜ?毎週月曜日の午前中を心待ちにしていたのに。クラシックに造詣の深い芸人、ふかわりょうさんが、チェリストの遠藤真理さんとともに、クラシック音楽の素晴らしさをさまざまな切り口で紹介する内容でした。リスナーは、クラシック初心者から博識な人まで幅広く、音楽の思い出とともに語られるお便りは、見知らぬ人の暮らしを想像させ、全国の方と、番組を通じて交流しているようでした。
名曲にリスナーが勝手に別の名前を付ける「勝手に名付け親」、曲の冒頭を流し、曲名をあてる「きらクラDON!」、「空耳クラシック」は、曲中に潜む、言われてみればそのように聞こえる日本語のフレーズを楽しむコーナーでした。中でも、お題の文章のBGMに合った曲を募集する「BGM選手権」が面白かった。ふかわさんらの朗読の仕方は変わらないのに、あてる曲によってがらりと変わる作品の印象に驚いたり笑ったり。取り上げられた文学作品で記憶しているのは・・・『泣いた赤鬼』『檸檬』、エッセイや外国の詩もあったと思います。最終回では、絵本『わすれられないおくりもの』を取り上げ、場面ごとに異なる曲をあて、「卒業制作」として締めくくられました。年老いたアナグマが、明るい光の中、力強く歩んで行くように感じました。
これまでも、ふかわさんは、番組スタッフへの感謝の気持ちがこみあげて、たびたび声を詰まらせたりしてきましたが、最終回では、懸命にこらえていたようです。ロングヘアーにヘアバンドを装着し、体操しながらつぶやくという芸でデビューした当初、ふかわさんに、こんな魅力があるとは想像できないことでした。番組、復活してほしいな。ふかわりょう、カムバック。(H)。