夢見る帝国図書館
更新日:2020年5月9日
『夢見る帝国図書館』
文芸春秋
2019.5
「直木賞作家・中島京子さんの作品」「図書館が舞台」となったら読むしかないでしょ、と思っていたこの作品。中島京子さんの作品は大好きですし、読む前から絶対面白いに間違いないのは分かっていました。でも、図書館に勤める身としては、「図書館」が素材の作品には、ちょっと心構えがいるのです(私だけ?)。果たしてどんな図書館が??と背筋を伸ばしてしまうのです。ところが。この作品はそんな思いを吹き飛ばしてくれました。読み終えるのがもったいない!でも一気読み!圧倒的に引き込まれました。私史上一番心に残る作品となりました。小説家を目指すフリーターの〈わたし〉は偶然知り合った年上の友人・喜和子さんに、「上野図書館のことを書いてみないか」と提案されます。しかも「図書館が主人公の小説みたいなイメージで」と。いぶかりながらも、〈わたし〉は図書館や上野界隈を愛する喜和子さんと交流しながら、帝国図書館の歴史を追い始めます。図書館をめぐるエピソードと喜和子さんの人生、過去と現在がクロスしながら話は進みます。読み進めるうちに新たな謎が・・。作中に紹介される本を読みたくなったり、上野を歩いてみたくなったり、図書館に行きたくなったり・・本作以外にも寄り道をしたくなる要素も満載です。また、今「本を読むこと」についても考えさせられる作品でした。本好き、図書館好きの方にぜひお薦めです。新たな図書館を発見できます。そしてまた、図書館で本と出あえる日を楽しみに。(N)