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「走る図書館」が生まれた日-ミス・ティットコムとアメリカで最初の移動図書館車-

更新日:2020年5月5日

『「走る図書館」が生まれた日-ミス・ティットコムとアメリカで最初の移動図書館車-』

シャーリー・グレン作 渋谷弘子訳

評論社

2019.12

『「走る図書館」が生まれた日-ミス・ティットコムとアメリカで最初の移動図書館車-』の書影

1台の移動図書館で日野市内全域への貸出しを始めてからすでに半世紀が経ちましたが、それより半世紀も前に米国で初めて移動図書館を走らせたひとりの女性がいました。女性の職業といえば教師や看護師以外にそう多くない時代でした。あるとき教会の会報で司書という新しい職業ができたことを知った彼女は、努力を積み重ねついに司書となります。ところがここからが彼女の真骨頂。文化の進んだバーモント州で得た安定した地位を捨て、片田舎のメリーランド州へと旅立ちます。そして彼女はワシントン郡の住民すべてが無料で利用できる図書館の実現に向けて挑みます。広大な土地で彼女がとった方法は、2頭の馬にひかれた「本の荷車」ブックワゴンを走らせることでした。批判や偏見に打ち勝ち、やがて多くの人々の支持を得ます。そして彼女の精神は州内にとどまらず米国全土に広まっていったのです。国は異なっても、本のもつ力を心から信じ、すべての人に本を提供し続けたいという彼女の精神は、今を生きる私たち図書館員にとっても常に問われ続ける命題です。(I)