ランゲルハンス島の午後
更新日:2020年4月24日
『ランゲルハンス島の午後』
光文社
1986.11
ここに一冊の本がある。奥付には、昭和61年11月30日 初版第1刷発行とある。昔大好きだった本だ。ものすごく久しぶりに本棚から出して読んでみた。ノスタルジーだ。「クラッシィ」という雑誌の創刊から二年間連載したものをまとめた作品で、村上春樹氏の文章に今は亡き安西水丸氏がイラストをつけている。水丸性に包まれた村上氏の文章がなんとも言えない力の抜け具合とちゃらっとした感じで、しかし絶妙に計算されてもいるような上手さがたまらない。今読んでも大丈夫だったし、絵も文章も再度堪能した。(まてよ、古すぎてうちの図書館にもうないんじゃないか?と検索したら、書庫に所蔵していてホッとした。)
人生における小さくはあるが確固とした幸せ、「小確幸」という大事な言葉を私の心の辞書に刻んだ本。他にも女子高生の遅刻、ニュースと時報、大猿の呪いの話とどれを読んでもくすくす笑い、気持ちが良くなっちゃう、私にとってはそんな読後感なのだ。でも一番好きなのはやはり、題名にもなっている「ランゲルハンス島の午後」である。自分の体の中にあるこの場所の神秘さ、春の昼寝のノンビリ感、最高だ。あー、私もお家で一杯やりたくなってきました。(W)