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図書館員の本箱 ひろば2026年6月号

更新日:2026年5月29日

『田中久重と技術』

河本信雄/著 玉川大学出版部 2021年10月

 この本は、田中久重が自身の一生をわかりやすい言葉で語るスタイルで、挿絵や写真を交えて綴られている、児童向きの伝記です。
 田中久重(1799-1881)は、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍した、からくり人形や灯火具などの天才的な「ものづくり職人」で、時計師でもあり、蒸気船・蒸気機関車の模型を日本で初めて製作した「技術者」です。13歳頃に久留米(九州)の自宅近くを測量していた70歳近い伊能忠敬に出会い、影響を受けたといいます。人の役に立つことの実践や、学び続ける精神は生涯続きました。40代後半に数学・天文学・蘭学などを学ぶために京都へ、74歳頃には実用電信機の製造を依頼され東京で工場を設立し、東芝の前身となりました。久重は「創り上げる苦労もあったが苦痛とは思わず、ワクワクした」と回顧しています。
 現代、当たり前に使っている便利な機械や道具は、このような立派な先人達の大変な努力によって発明され、技術革新の上に生活できていることを改めて認識しました。製作の過程や数々の功績などを、時代背景を含めて知ることが楽しく、大人になってから児童向きの伝記を読むのもよいものだと思いました。日本のエジソンみたいなすごい技術者の話です。 (M)