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図書館員の本箱 ひろば2025年7月号

更新日:2025年7月10日

『トリガール!』

中村 航/著 角川マガジンズ  2012.8

「鳥人間コンテスト」をご存じでしょうか? 「鳥人間コンテスト」(通称「鳥コン」)は、自作した人力飛行機を琵琶湖で飛ばし、飛行した時間や距離を競う大会です。チームは大学生や高専生、社会人が主で、先人たちの試行錯誤や成果をもとに機体を設計し、資金を集め、製作し、そして琵琶湖で一度限りのフライトに臨みます。

『トリガール!』は、著者の母校である芝浦工業大学の「Team Birdman Trial」をモデルにした物語です。人力プロペラ機部門で唯一2人乗りの人力飛行機を製作しているチームで、その機体は1人乗りと比べて10m程度大きくなっています。2人で乗る分、飛ぶための出力も大きくなりますが、重量も増えるため相応の出力が必要な機体です。

『トリガール!』の主人公・鳥山ゆきなは、もともと機械に興味はなく、ただ理数系が得意だったために何となく惹かれた建築系の学科を受験し、全滅。一浪して工業大学の機械工学科に入学しました。同じ学科の友人・島村和美に連れられて、人力飛行機のサークル『T.S.L.(チーム・スイカイハイ・ラリアット)』の勧誘イベントに参加します。

友人の流れで入部したゆきなは、先輩に誘われ、人力飛行機の動力を担うパイロット班に入ります。最初は楽しく自転車に乗るゆきなですが、トレーニングの厳しさにサークルをやめようとします。そんな折、慕っていたパイロットの先輩が怪我をしてしまい…。

鳥コンのライブ配信を見ていると、琵琶湖のプラットフォームにたどり着くまで、また飛び立ってからの各チームの努力や涙を垣間見ることができます。『トリガール!』では、特にパイロットの背負う責任や想いを感じられた気がします。配信を見てから読むとチームの裏側が、読んでから配信を見ると各チームの努力の結実がより感じられるのではないでしょうか。今年の配信は7月26日と27日の予定です。本とあわせてお楽しみください。

(Y)