パンくずリスト:このページは ホーム »の下の ヤングコーナー »の下の 作家リスト »の下の 森見登美彦 です

森見登美彦

はじめに

この度は本書、「"Hino Young Staff's favorite selection" talk? talk! Talk!! ~森見登美彦~」をお手にとっていただき、誠にありがとうございます。

この冊子では、森見登美彦氏の作品世界に魅せられた日野ヤングスタッフのメンバーが、森見氏の作品について紹介するほか、Q&Aコーナーを通して森見氏の魅力を語り合ったりしています。

さて、みなさんは森見登美彦氏の作品について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

独特の古めかしさが持ち味の文体、古都を舞台にした妖しく美しく謎めいた世界観、SF作品で見せる不思議な日常生活の描き方...... 森見登美彦氏をご存知の方も、この冊子を通じて初めて出会うという方も、森見氏の更なる魅力を発見することに繋がれば、幸いです。

それではどうぞ、お楽しみください。

From:かーこ

小説作品

『夜は短し歩けよ乙女』角川書店:2006年、角川文庫:2008年

私が初めて森見登美彦さんの作品と出会ったのは、『Sweet Blue Age』というアンソロジー短編集に収録されていた短編でした。 「なんだこの独特すぎる文体は!?この不思議な世界観は!?」と驚いたのも束の間、京都を舞台に、他に類を見ない個性的な語り口調で繰り広げられる森見ワールドに、いつしか夢中になっていました。 それが、後にこの『夜は短し歩けよ乙女』の第一章となる物語との出会いです。 その時は、ここまでこの森見登美彦という作家にハマるとは、夢にも思っていませんでした。 (かーこ)

どこへ行った!? 私の薔薇色の大学生活!
『四畳半神話体系』大田出版:2005年、角川書店:2006年

なんとも絶妙な言葉回しがくすっとくる、やけに爽快な気分になる作品です。 突拍子もないことを飄々とやってのける小津、たまらん。 (ふう)

迷い込んでは、いけない―.
『きつねのはなし』新潮社刊:2006年、新潮文庫刊:2009年

大学3回生になり、一乗寺にある古道具屋でアルバイトを始めた。 店の使いとして行くことになった屋敷で、天城さんという男性に出会う。 ある日、他の客に渡すはずであった皿を割ってしまい、代わりのものを見繕ってもらうために天城さんに会いに行くことになる。 そのお礼にと、電気ヒーターを渡してしまったことで奇妙な体験をすることになってしまう。 「きつねのはなし」を含め4作品が描かれています。別々の物語ですがつながっている部分もある...かもしれません。 読んだあとは、ぞわぞわっとするようなちょっと不気味な4作品でした。 (雪だるま)

五つの名作文学になぞらえた、彼らの青春物語.
『「新釈」走れメロス 他四篇』祥伝社:2007年、祥伝社文庫:2009年

太宰治の代表作『走れメロス』ほか、芥川龍之介の『藪の中』、中島敦の『山月記』、坂口安吾の『桜の森の満開の下』、森鴎外の『百物語』にのせて送る、オマージュ短編集。 『夜は短し歩けよ乙女』、『四畳半神話大系』、『有頂天家族』などの作品ともリンクしています。 『走れメロス』は、もう出だしから笑うしかない!オチとしては、『藪の中』が一番好きかなぁ。 ちょっとレトロなデザインの表紙も魅力的です。 (かーこ)

京都の裏で暗躍する、狸たちの物語.
『有頂天家族』幻冬舎:2007年、幻冬舎文庫:2010年

京都、下鴨神社周辺に広がる糺の森。そこには人を化かす力を持つあの生き物が住んでいた。

皆さんは妖怪ものというとどんな物語を思い浮かべますか? それはあるいは個性的な仲間達のほんわかストーリー。 あるいは救いのない怪談話。 あるいは心躍る冒険に満ちた妖怪退治。 この本には自由自在に変化する狸、空を飛び超常の力を使いこなす天狗などの妖怪がたくさん出ます。しかし、先程述べたような物語ではなく、実に冴えなくどうしようもない、そして何より阿呆らしい物語が『有頂天家族』です。この物語には狸と天狗ばかり出ます。 登場というより、出ます。わらわらと大量に。それこそ居ますと言った方が正しいぐらいに。 蛙に化けて井戸から出て来ない狸、真面目に何かをする気が全くないぐうたら狸、女に騙されて飛ぶこともできなくなった元・伝説の天狗、など様々な阿呆たちの阿呆な話が淡々と描写されており、それでいて爽やかな読後感を持つという、森見登美彦さん独特な妖怪もの、それがこの『有頂天家族』です。 (降識)

祇園祭に潜む 幻想奇譚.
『宵山万華鏡』集英社:2009年、集英社文庫:2012年

京都の夏祭り・祇園祭の宵山を舞台とした短編集です。 章によって主人公が変わるので、沢山の人の視点から宵山を見ることができ、それぞれの章の主人公たちが他の章のお話にも登場しているので、読んでいて飽きないです! (千代)

僕らはこうして、世界を知ってゆく.
『ペンギン・ハイウェイ』角川書店:2010年、角川文庫:2012年

主人公のアオヤマくんは、たくさんのことに興味を持ち、それらについてノートに書き残している。 小学4年生ではあるが、話し方は大人顔負け。怒りもしないし泣きもしない。 そんな彼の住む街に、突然ペンギンが現れた。しかも、ペンギンを生み出しているのは、親しくしている歯科医院のお姉さん。 森には謎の球体が出現し、アオヤマくんは同級生2人とともにこの謎を研究していくことになる。 恋愛小説ではないですが、最後にアオヤマくんの「きゅん」とする言葉が記されています。 興味を持ったことはとことん研究する。そんな彼の生き方を見習いたい、と思える一冊です。(雪だるま)


物語は勿論ですが、登場人物が魅力的です。主人公のアオヤマくんは、「ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。だから、将来は きっとえらい人間になるだろう。」なんて真面目に考えてしまう面白い子。そんなアオヤマくんの街にペンギンが現れて...。彼は一生懸命に謎を解きます。 突然現れたペンギン、そしてお姉さんの謎がとけた時、結末に驚きつつも、アオヤマくんやお姉さん、他の登場人物が好きになるような話です。 文庫本解説の萩尾望都さんの"最後のページを読んだとき、アオヤマくんとこの本を抱きしめたくなる"というコメントは、読んだ人なら共感できるはず! (Yuki)

『郵便少年』 「ほっと文庫」より 角川書店 角川文庫×BANDAI:2011年 (小説つき入浴剤)

『ペンギン・ハイウェイ』の番外編!

 

小説以外の作品

『美女と竹林』光文社:2008年、光文社文庫:2011年

作家・森見登美彦とは一体何者なのか―。竹林を巡りながら(何故!?)その実体に迫る、奇妙奇天烈なエッセイ集。 森見氏が描く、作家生活への想い、憧れていた作家生活と現実とのギャップ、学生時代からの友人たち、果てなき妄想......。森見ファンなら必読、大笑いせずにはいられない一冊です。 ちなみに私が大好きな一節がコチラ。 森見さんの代表作の一つ『四畳半神話大系』から、四畳半生活に憧れる読者の声が多いとの事なのですが、それに対して森見さんはというと、「人間としてダメになるよ!ホントに! 学生時代に時間を浪費すればするほど、世間一般の価値観から遊離し、戻ることが難しくなる。ついに帰り道を見失った人間たちの末路は悲惨である。この道へ入るからには、生きるか死ぬかの覚悟をもたねばならない。戯れに足を踏み入れてよい道ではないのだ。ゆめゆめ疑うことなかれ。」

当時、大学院生活を送っていた私は大きく頷き、「森見さんの事、好きでいいや。もう」と思ったのでした。 (かーこ)

『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』新潮社刊:2011年

森見登美彦作品と共にめぐる、京都の町並み。 「なるほど、こんな風景の場所を舞台にしていたのか」と、森見作品をはじめ、京都を舞台にした文学作品への造詣(ぞうけい)が深まる事間違いなし。 可愛いイラストが満載の地図も素敵。 森見登美彦氏による書き下ろしコラムも収録されています。 (かーこ)

 

その他の作品

  • 『太陽の塔』 新潮社刊:2003年、新潮社文庫刊:2006年
  • 『恋文の技術』 ポプラ社:2009年、ポプラ文庫:2011年
  • 『四畳半王国見聞録』 新潮社刊:2011年

 

アンソロジー参加作品

  • 「夜は短し歩けよ乙女」 『Sweet blue age』(角川書店 2006年)所収 ※1
  • 「蝸牛の角」 『短篇ベストコレクション 現代の小説2008』(徳間書店 2008年)所収 ※2
  • 「グッド・バイ」 『短篇ベストコレクション 現代の小説2011』(徳間書店 2011年)所収 ※2
  • 「迷走恋の裏路地」 『不思議の扉 午後の教室』(角川書店 2011年)所収
  • 「四畳半世界放浪記」 『Fantasy Seller』(新潮社 2011年)所収
  • 「この文章を読んでも富士山に登りたくなりません」 『作家の放課後』(新潮社 2012年)所収

※1......『夜は短し歩けよ乙女』に収録されています。
※2......『四畳半王国見聞録』に収録されています。
※掲載されている情報は、2012年12月までのものです。

 

Q&Aコーナー

Q.森見作品で一番好きなものは? また、その理由は?

Yuki:『ペンギン・ハイウェイ』。ラストが素敵だなぁと思うのが大きな理由です。後、アオヤマ君が可愛すぎます。

千代:『新釈「走れメロス」他四篇』です。太宰治の「走れメロス」のように主人公が京都の街を走り回り、最後は友情エンドだったり、おもしろい作品です!

雪だるま:『ペンギン・ハイウェイ』です。理由は、アオヤマくんの探求心に感銘を受けたこと、お姉さんに対する恋心にきゅんとするところが好きだからです。

かーこ:一番は難しいですが、敢えて挙げるならエッセイの『美女と竹林』です。森見さんの妄想と暴走...すごすぎます!

降識:『新釈「走れメロス」他四篇』。メロスがこのような疾走をすると誰が思いつくか。森見さんの他に居ないでしょう。

 

Q.作品の中で印象に残った台詞や文章は?

Yuki:『ペンギン・ハイウェイ』で、ラストのお父さんとのドライブシーンでの「お姉さんのことが好きだったんだね」、「うん」みたいなやり取りが切なくて印象的でした。

雪だるま:「ぼくがどれだけお姉さんを大好きだったかということ。どれだけ、もう一度会いたかったということ。」(『ペンギン・ハイウェイ』より)

千代:『夜は短し歩けよ乙女』の「恥を知れ!しかるのち死ね!」です。

かーこ:いろいろな作品に登場する、「ゆめゆめ疑うことなかれ」です。各作品でこの台詞と出会うとニヤリとします。

 

Q.森見作品を読むことになったきっかけは?

Yuki:最初は、タイトルや本の装丁です。

千代:もともと京都とかが好きで、それを知っていた兄に『夜は短し歩けよ乙女』の漫画(森見登美彦・原作、琴音らんまる・漫画、角川書店:2008年)を借りて読んだことがきっかけです。

かーこ:アンソロジー短編集『Sweet blue age』を読んで、『夜は短し歩けよ乙女』の冒頭部にあたる短編を読んだのがきっかけです。

雪だるま:SNSで知り合い仲良くしている方が、森見さんを愛していたので、それが読むことになったきっかけです。

 

Q.京都が舞台の作品が多いですが、読んでからその場所に行ったことはありますか? または、これから行こうと思っていますか?

Yuki:『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』を読んで、再び行きたくなりました。

千代:今度行ってきます!

かーこ:森見さんの作品を読んでからは、行っていないですね。これから行ってみたいのは、鴨川デルタです。『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』を読んで、風景の美しさに惹かれました。

雪だるま:読んで行きたいと思った場所は伏見稲荷大社です(『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』より)。千本鳥居をくぐっている間、どんな気分になるのか体験してこようと思います。

降識:修学旅行の折、京都の糺の森をやたらハイテンションで歩き回って来ました。

 

Q.森見さんの作品の中で行ってみたいと思った場所はありますか?

Yuki:京都です!

かーこ:『新釈「走れメロス」他四篇』を読んで、京都大学の学園祭に行ってみたくなりました。

千代:下鴨神社の古本市(『夜は短し歩けよ乙女』より)と、「哲学の道」(『新釈「走れメロス」他四篇』の「桜の森の満開の下」より)です!

 

Q.森見登美彦さんの作品で、装丁が最も好きなものは?(単行本、文庫本どちらでもOK)

Yuki:『夜は短し歩けよ乙女』、『宵山万華鏡』、『ペンギン・ハイウェイ』です。

千代:『宵山万華鏡』です。

かーこ:『恋文の技術』、『新釈「走れメロス」他四篇』です。

雪だるま:『夜は短し歩けよ乙女』の文庫です。

 

Q.森見登美彦さんを好きな方に、オススメしたい作家や作品はありますか? また、その理由は?

千代:恒川光太郎さんの『夜市』(角川書店:2005年)という作品です。

夜の市場であるものと交換に野球の才能を手に入れた少年のお話なのですが、雰囲気が森見さんの作品と少し似ていておすすめです!

かーこ:最近、プッシュ中の作家・瀧羽麻子さんの『左京区七夕通東入ル』(小学館:2009年)、『左京区恋月橋渡ル』(小学館:2012年)です。京都を舞台にした大学生の恋愛ものです。また、森見さんの独特の文体が好きな方には、夏川草介さんの『神様のカルテ』(小学館:2009年)もオススメです。


 

おわりに

いかがでしたか? 森見登美彦氏の新たな魅力は、見つかりましたでしょうか。

更に森見登美彦氏の作品を読みたくなったというあなたも、これから初めて読むというあなたも、是非、いとも不可思議な森見ワールドに浸ってみてください。 ただし、その謎めいた世界に迷い込みすぎないよう、ご注意ください。

それではみなさんご一緒に、 「ゆめゆめ、疑うことなかれ。」

発行:日野市立図書館

製作:日野ヤングスタッフ

装画:かーこ

平成25(2013年)3月

  • はてなブックマーク
  • LINE
日野市立図書館

〒191-0053
東京都日野市豊田2-49-2
電話:042-586-0584