『残月記』
- 双葉社
- 2021.11
誰かに聞かれたことも公言したことも特にないのですが、私は月がとてもとても好きです。
仕事の帰りに夜空に浮かぶ月を見つけると、とても嬉しくなりますし、昼間の空に月を見つけたときは、とても得をした気分になります。
おまけに家のカレンダーには、当然のように月の満ち欠けが掲載されていて、「今日は〇〇の月だな」などと確認をするのが密かな楽しみとなっています。
そんな私がタイトルと美しい装丁にひかれて手に取ったのがこの『残月記』です。
この本は月にまつわる3つの短編で構成されています。幻想的で時に残酷でそして美しい・・・まるで月そのもののようなお話です。
どの話も印象的なのですが、私は特に一番始めのお話である「そして月がふりかえる」が衝撃的でした。
主人公の言葉の一つである「太陽はみなの頭上に分け隔てなく昇ってくるが、月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくるのかもしれない。」という言葉にドキリとさせられた後、 いつも同じ方向を向いているはずの月が、突然裏側を向く。その衝撃的な光景に遭遇したその時から、主人公の人生に文字通りひっくり返るような出来事がおきる・・・
今でも月を見ると月がふりかえるその光景が脳裏に浮かんできてしまうくらいです。
それでもやはり私は懲りずに空を見上げて月を探してしまうのですが・・・。(K)