『ゆうやけにとけていく』
- 小学館
- 2023.7
夕暮れの変わりゆく色が楽しくてずっと空を見ているのが好きだった子どものころ、ゆうやけの向こうには太陽が沈むオレンジ色の「ゆうやけの谷」が広がっていると思っていたっけ。そして、ゆうやけが消えゆく紫色と青黒い空の中で聴いた子守歌。あれは夢だったのか現実だったのか・・・。同じ赤いゆうやけがロマンチックに見えたり血のように見えたりすることもあった。忘れていた遠い記憶がよみがえるのです。
数々のゆうやけの景色が短い言葉と共に描かれているこの絵本。何か物語が文字になっているのではなく、このいくつかのゆうやけの場面から、読者自身が物語をつむぎだすことができる本です。私は、まるで絵の中に心が溶けて、つい幼いころのゆうやけの思い出に引き込まれてしまいました。
1日の喜びや悲しみを映し出すゆうやけの空。今日のゆうやけの色はどんな風に私たちそれぞれの心に映し出されるでしょうか。(N)