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先生の本箱 ひろば2024年10月号

『流浪の月』

凪良ゆう/著
東京創元社
2019年8月

  小学生の女の子・更紗は、優しい両親の元で幸せに暮らしていました。しかし、ある日父が病気で亡くなり、母が悲しみのあまり家を出ていってしまうと、一人残された更紗は伯母の家庭に引き取られることになりました。伯母の家での生活はとても息苦しいため、更紗は放課後すぐに帰宅せず、しばらく公園で自分の時間を過ごすようになります。更紗は、いつも公園に一人でいる怪しげな男・文の存在をはじめは怖がりますが、みんなに陰で「ロリコン」と嗤われていることや、他に居場所がないように見えることをかわいそうに思い、やがて文の姿を見ると「辛いのは自分だけじゃない」と安心するようになります。ある日、文は雨が降っているのに傘も差さずうつむいている更紗に声を掛けました。 「帰らないの?」「帰りたくないの」「うちにくる?」「いく」 更紗は、文に着いていき、彼の家で、昔のように自由で幸せな日々を過ごします。 文のしたことは「誘拐」という立派な犯罪ですが、それなら更紗は、「誘拐されたかわいそうな女の子」なのでしょうか? (M)


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