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図書館員の本箱 ひろば2024年5月号

『日本の名作童話 22 くじらの海』ほか

川村 たかし/作 石倉 欣二/絵
岩崎書店
1997年4月

  皆さんや、皆さんのお父さんお母さんは、ご飯を食べるために働いているでしょう。会社に行ったり、家でパソコンを見たり、工場や畑でいろいろなものを作ったり、いろいろなものを運んだりしているでしょう。 昔々この村では、人々はご飯を食べるためにクジラを取っていたそうです。クジラを取らなければ皆が飢えてしまうからです。冬にかけて、男たちは銛を持って小舟に乗り込み海に出ました。砂浜にかがり火をたいて、少年や女たちはお茶や食事の支度をして待ったそうです。 何艘もの船を漕ぎクジラを取り囲む時、櫓を漕ぐ汗で体からは湯気がたったそうです。逃げるクジラと追う人間たちの一騎打ちが始まるのです。網で追い込み、泳いでいた子供のクジラに銛を打った時、クジラ捕りのいえもんやでんじたちは、怒った母クジラの目を見たでしょうか。銛を打たれたまま母クジラが逃げる時、子供のクジラをじっと見つめていたでしょうか。 獲物を持って帰ると、村は総出で迎え、肉を切り分けて皆で分けました。お殿様にも差し上げたことでしょう。生きている喜びと、お念仏を唱えてしまうような怖れと激しさと、くじらに申し訳ない気持ちと、死も、暮らしの中で混ぜこぜになってすぐ隣同士にありました。昔はそういう暮らしだったそうです。今ではもうほとんどクジラは来なくなってしまいました。 「くじらの海」にはほかの動物たちの話も載っています。ぜひ読んでみてください。(Y)


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