

街を歩けば必ず目にする、けれどつい見過ごしてしまいがちなあんなものやこんなものの図鑑です。
記念すべき一項目目を飾るのはパイロン(またの名を三角コーン)。なんと見開きに18種類ものパイロンが掲載されています。ずらっと並ぶパイロンを眺めるだけで楽しいものですが、筆者の解説もまた味があって、冷静に特徴を捉えつつも、まるで応援するような、妙に感情移入した語りで紹介されています。
「もし、クルマがしょっちゅう接触するならば、それはパイロンとしての使命を果たしていないのだ。パイロンは、とにかく、だれにも触って欲しくないと思っているはずだ」(p.12)
......なるほど。そしてこの項目の締めくくりは、劣化によって破損し、役割を終えた姿を写した「パイロンの死」。わずか4ページの短い間にパイロンという働き者の一生を見届けたような気になり、すっかり愛着がわいてしまうのです。
電柱、標識といった大きなものから、車止め、送水口などの「あー、そういえば、ある」といったもの、なかには「雰囲気五線譜」なんてユニークなものまで、街にある様々なものに着目したこの本、第二弾「街と境界編」ではさらに収集範囲を広げています。名前を知ることで見えるようになるものがあります。ぜひp.2とp.3の写真を見比べてみてください。今まで見過ごしていたものたちが「見える」とはこういうことか!と、驚くはずです。そして散歩に出かければ、なかなか帰れなくなるでしょう。(A)