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図書館員の本箱 再開第11回

『江戸前 通の歳時記』 

  池波 正太郎/著 高丘 卓/編 集英社 2017.3

『眠れる美しい生き物』 

  関口 雄祐/著 エクスナレッジ 2019.12


 おせち、お雑煮、お屠蘇...お正月料理と言えば色々ありますが、お正月の何よりの楽しみは、鏡餅の上にのっていた橙に、たっぷりのお砂糖とお湯を加えた、祖母お手製の橙ジュースだったそう。『江戸前 通の歳時記』は、そんな池波正太郎さんによる食にまつわるエッセイ集です。通のたしなみから、忘れられない思い出の味、旬の味まで綴られています。柚子と湯豆腐など、橙、小鍋だて...こうしてタイトルを並べるだけでも、心惹かれるものがあります。一粒ずつではなく、一房を3口で豪快に食べる甲州式ブドウの食べ方(なんて贅沢!)や、山葵醤油に一晩漬けて焙った鮪のお刺身、ある調味料を加えることで格別になるソース焼きそば。どれも自分が口にしたことはないのに、おいしそうだと思えるから、不思議です。他にも季節ならではの食を楽しむヒントが詰まっています。そこには、池波さんの食べることに込められた想いやこだわりが宿っているように感じます。十歳にしてお小遣いを貯めて、上野で一人ビーフ・ステーキを食べたという著者の域には、到底及びませんが、この本を読んでいると、真似して通ぶってみたくなります。読んで試して、ぜひ池波流、通のたしなみを存分に堪能してみてください。

 お腹が満たされたところで、もう1冊ご紹介します。動物たちの写真に和む方は多いと思うのですが、そんな方にとってこの本はきっと心ときめくはず。その名も『眠れる美しい生き物』。動物たちの寝顔や眠たげな瞬間を、集めた1冊です。普段なかなか見ることのできない、生き物たちの無防備な姿が見られます。帯のキャッチコピーは "その寝相にはワケがある"その紹介どおり、眠り方も千差万別です。立ったまま眠るもの、丸まって眠るもの、目を開けたまま眠るもの。私たちからすると、そんな体勢で本当に休まるのだろうか...と心配になってしまう生き物も。"キリンは長い首を曲げて眠ることがある""ハムスターも歳を取ると早寝早起きになる""ハリネズミには冬眠だけでなく夏眠する種がいる"などなど...、動物たちのちょっと面白い生態や睡眠習慣が、美しい写真とともに紹介されています。個人的にオススメなのはヒョウ、オオカミ、ラッコ。その幸せそうな愛くるしい姿に、癒されること間違いなしです。眺めていると、思わずこちらも眠りの世界に誘われます...今夜はいい夢が見られそうです。(T)

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