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閉じこもるインターネット グーグル・パーソナライズ・民主主義

『閉じこもるインターネット グーグル・パーソナライズ・民主主義』

イーライ・パリサー/著 井口耕二/訳
早川書房
2012.2


 コロナ禍の今、出歩くこともすっかり控えて、消費のエネルギーはついネットの方へ向かってしまいます。サイトにはだいたいレコメンド機能というのがあって、やれあなたが選んだのと同じ商品を購入した人は他にこれを選びましただとか、この商品を選んだ人はきっとこういう商品も好きなハズとか似たようなものをもれなく教えてくれる、アレです。
 この本では、「プラットフォーム」と呼ばれるいくつかの巨大IT企業が、日常的に行っていることについて考察を巡らせ、詳しく解説したものです。例えばなにか検索するごとに、システムのアルゴリズムは学習して、「この人ってこんな人」というパーソナライズドフィルターを通したデータを蓄積・規定し反映させます。人の考えや行動をコンテキスト(文脈)として再現できるよう、データをどん欲に取り込み増やし、次の消費行動へと駆り立て、囲い込んでいきます。 
 まるで、システムがあなたのような「人」になりたがっているかのように。あるいは「神」に。 「パーソナライゼーションとは、既存の知識に近い未知だけで環境を構築することだ。(略)ただ、新しいものだと感じる情報だけで環境を構築することだ。パーソナライズされた環境は自分が抱いている疑問の解答を探すには便利だが、視野にはいってもいない疑問や課題を提示してはくれない。(略)フィルタリングが完全におこなわれた世界は予想外の出来事やつながりという驚きがなく、学びが触発されにくくなる。」そう、「答え」はあるが「問い」がなく、「重要なものを優先する仕組みが用意されていない。」「クリックしているのは現在の自分であり、どうしても「べき」より「したい」がクリックに反映される(略)」「過去のクリックの履歴が未来を完全に規定してしまう世界だ。ウェブ履歴を消去しなければ、我々はその履歴をくり返し生きる運命にある―そう表現してもいいだろう。」  こうして個々にカスタマイズされて届く情報は、もはやなんでその情報を提供するのか人のロジックでは説明できず、ブラックボックス化していき、あなたの知らないうちに偏った情報ばかりを目にする機会を増やしていくことでしょう。システムに慣れ切った人々は、やがて複雑で不愉快なものを遮断することが多い「フィルターバブル」の中に閉じ込められ、タコツボ化していきます。「フィルターバブルの中では、狭い自己の利益がすべてであるかのように感じられる。オンラインで買い物をしてもらうにはそのほうが好都合だが、皆で優れた決定をおこなうには不都合である。」分断を容易にするこのような世界の姿は、便利で簡単・安全安心というアカルイミライの楽園なのか、それとも...  著者は、企業の論理で進みつつあるこうした事態に、「善を為すエンジニアが必要なのだ」と説きます。また、ユーザーに対しても「だれとでもつながれる世界、ユーザーがコントロールできる世界というインターネットのビジョンを守る―それこそ、いま、我々がなすべきことだと思う。」と提案し、警鐘を鳴らしています。  んー、まぁ、そうは言っても使っちゃうんだろうなぁと思いますよ、ネット通販。ただ、コンピューターがクリックから想像しているような「この人ってこんな人」じゃないんじゃないか、と自分自身は思っていますけどね。家族や友だち(時には占い師とか?)から「あなたってこんな人」と言われたら、「そうかなぁ」と思うこともあるかもしれませんが、コンピューターに「あなたには57%の確率で黄色い服が似合うんですって」とか教えてもらっても信じないかも?  この本を参考文献にあげている『♯リパブリック~インターネットは民主主義になにをもたらすのか~』(キャス・サンスティーン/著 伊達尚美/訳 勁草書房 2018.8)では、こうした企業の動きに規制をかけ、民主主義を活発に推し進めるにはどのような方法があるのかを探っていくものです。こちらも刺激的。  この本に「セレンディピティ(serendipity)」ということばが出てきて、オッと思ったものです。セレンディピティとは、素敵な偶然に遭遇したり、予想外の発見をすること。ネット上の検索では、セレンディピティが起こるような設計にはまだ不十分なところがあるそうです。  いつもはネットで予約している方も、今度ご来館されたときには、ぜひ館内をぐるっとひと回りしてみてください。図書館の本は、ある一定の法則に基づいて分類・配架されていますが、今まではあなたの目に入ることもなかった本に「偶然」手が伸びて、世界を広げることができるかもしれません。  図書館には、セレンディピティ、あります。(U)
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