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〆切本

『〆切本』

左右社編集部/編
左右社
2016.9


 子どもの宿題から大人の仕事まで、あらゆる人が頭を抱え、追われる存在である「〆切」。この本では、明治から現在に至る書き手たちの「〆切」にまつわるエッセイ・手紙・日記・対談が集められている。
 人は〆切が迫ってくると、自分自身を叱咤激励したり、間に合わなかった時の言い訳を考えたり、発狂寸前まで苦しんだり、逃亡したりと様々な行動を起こす。私も、学生時代には宿題をやっていかず、先生に怒られることがしばしばあった。社会人として働いている今も、〆切は怖い存在で、頭を悩ませ、時には変な行動を起こしてしまう。原稿の〆切が迫った文豪達もそうだ。彼らは、〆切が迫ってくると、それぞれの個性を爆発させ、実に特徴的な行動を起こしている。
 本書にあった話の中で、特に笑ってしまったものがある。それは、出版社の保養所に缶詰めにされるも、様々な言い訳をつけて、全く原稿を書こうとしない高橋源一郎の話だ。山海の珍味を食べ過ぎて仕事をする気になれない、インクリボンがないからできない、編集者から電話がかかってきて創作意欲を失った等、言い訳が滅茶苦茶で面白い。缶詰めになる前も、猫が風邪をひいたからと言って、〆切を引き延ばしていた。まるで小学生の様な言い訳が、堂々と出てきていて、思わず笑ってしまう作品だ。この他にも、島崎藤村や有吉佐和子、漫画家の長谷川町子など、様々な〆切にまつわるエピソードが掲載されており、それぞれ興味深い言動を残している。
 自身が追われる立場の時は、恐ろしい存在の「〆切」。だが、人が〆切に追われ、右往左往する姿を文章で読むとこんなにも面白い。それは恐らく、書き手が自身のエピソードの面白さを、文章で引き立てているからだ。ユーモアがたっぷりで、作家の文章力を感じられる『〆切本』。興味を持った方は、ぜひ読んでみていただきたい。(M)
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